2005 JSLIS Abstract: Library Advocacy In Canada

Here is the abstract for a presentation that I did at the May 2005 conference of the Japan Society of Library and Information Science.


氏名: Shaney Crawford
所属: 筑波大学 図書館情報メディア研究科
発表題目: カナダにおける図書館アドボカシー (Library Advocacy in Canada)

発表要旨:
本研究は、カナダにおける図書館アドボカシーの実態を解明し、それを分析することを目的としている。カナダにおけるアドボカシーを理解することにより、カナダだけでなく世界的に図書館アドボカシーの取り組みを改善するための基盤を得ることができるであろう。 アドボカシーとは、「図書館に影響を与え得るような政治的決断を下す人たちに、図書館および図書館界の活動に十分配慮させるため、図書館員および図書館協会の職員をはじめとする図書館界が行う継続的な取組み」と定義でき、図書館は国の教育・福祉基盤に必要不可欠な要素であるが、その存在と機能は、政治環境の変化によって脅かされる可能性が大きい。
本研究ではアドボカシーの展開をLibrary Book Rate (LBR)を用いて明らかにする。LBRとは、図書館がカナダ国内の他の図書館や個人宛に本を送る際に利用できる郵便料金の優遇制度である。この優遇制度は、カナダ連邦政府の方針に基づいて、刊行物支援計画(Publications Assistance Program)の一環として行われている。LBRは1939年から実施されており、図書館界では1967年以来、この制度を維持するため、多様なアドボカシーの取組みを続けている。その中心的役割を担っているのが、カナダ図書館協会、フランス語を話す人を対象とした図書館協会ASTED、カナダ国立図書館、および連邦政府、カナダ郵政公社である。
本研究は、1960年代から現在まで行われてきたアドボカシーへの取組みの歴史を詳細に検討することにより、カナダの図書館アドボカシー活動の特徴を明確にし、図書館界が自らの利益を守るときに直面する問題を探ろうとするものである。LBRのアドボカシー活動は、1960年代後半にはカナダ郵政省との直接的な話し合いによって行われるものであった。1970年代後半に郵政事業が連邦政府から事実上分離し、国営企業として独立すると、ロビー活動の相手は連邦政府となり、連邦政府が郵政公社と交渉するという二段階方式がとられるようになった。最近ではプロのロビイストを利用したり、図書館界の主要なメンバーが直接国会議員に接触したりすることも一般化した。
カナダの図書館アドボカシーでは、党派の枠組みを超えて活動し、政治家より官僚に接触することに重点を置く。アドボカシーには活動期と休止期があり、近年ではこの活動期と活動期の間隔が短くなってきている。アドボカシーを成功させるためには、リーダーの存在が重要となるが、そのリーダーが交代すると、手法も変化せざるを得ない。また、カナダの図書館界では、説得術の有効性がよく理解され、アドボカシーに対する研究の重要性も認識されている。
カナダでの図書館アドボカシーの課題は、図書館界がコントロールできる因子とできない因子とに分類できる。図書館界は、アドボカシーの時期や関係議論の秘密保護の必要性に関しては、一定程度コントロールできる。内部の意思疎通を改善し、成功と失敗をどのように定義するかも自ら決定することができる。しかし、図書館界の主張がどの程度政界に受け入れてもらえ、どの程度情報を提供してもらえるかといった点や、特定の問題に長期にわたり取組んでいるときの関係者に蓄積される疲労の程度などをコントロールすることはできない。
本研究では、アドボカシーが多彩な因子を巻き込んだ複合的な過程であることを明らかにする。この複合性ゆえにアドボカシーの成否と特定のキャンペーンに投入した労力の大きさとはほとんど相関関係がみられない。図書館界に求めるものを最も効率よく獲得するためのアドボカシーの展開方法を知るには、さらに研究を進める必要がある。